怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
「確かにナイフはおもちゃだった。でも、本物か偽者かなんてそんな判断咄嗟に出来るわけない。砂奈が悪いに決まってる。警察に連絡しようと思ったとき、花華ちゃんが呻いたんだ。生きてた」

 頭を抱えて、苦悶の表情を浮かべた。

「救急車を呼ぼう。俺はそう言ったよ。でも、砂奈が、俺に泣きついて来た。このまま救急車を呼んだって、絶対死ぬよ。私を犯罪者にしたいの? 大体轢いたのはあなたよ。あなただって飲酒運転でしょう。バレたら大学取り消しだよ。私のこと、好きじゃないの? 大好きな彼女が犯罪者になって良いの? 私は、内巴と離れるなんて嫌だよ」

 ハハッと田中は笑った。

「よくもまあ、ペラペラペラペラと……!」

 憎しみに満ちた声音で言い捨てると、泣き出しそうにため息を零した。

「でも、俺はあのとき、大島砂奈が好きだったから。だから、彼女が花華ちゃんの息の根を止めた後、その指示に従って、遺体を焼却炉で燃やした」

 骨は、と田中は床を見つめる。

「骨は、このペンションの床下に埋めた。地下室の床の一部が取り外せるようになってるんだよ。そこを開けて、穴を掘って埋めた」

 呆然と田中は空中を眺める。

「でも、大島さんのあの動画を発見してしまったんですね?」

「そうだよ。俺は、砂奈の動画はチェックしてたから。本当は俺、都会の方が好きなんだ。田舎に住むなんて考えたこともなかった。なのに、両親が急にここを売るなんて言うから、こんなところに住まなきゃいけなくなったのに、あいつは悠々自適に暮らしてて、なんでだよ、お前のせいだろ!」

 それなのに、と感情的に田中は続けた。

「あんな動画アップしやがって! 俺の苦労を考えもしないでっ! こっちはあの日以来ろくに眠れもしないのに、なんでだよ! 不公平だろっ! その上、あの女、俺がここに好きで住んでるんだろってぬかしやがったんだよ! そんなわけないだろっ! 俺は、あの子の骨が発見されないようにここに住んでるのに……! あの女は好きに生きてる! あの、女、あの、裏切り者がっ!」

「大島さんを殺害した理由は解りました。では、猪口さんは何故殺したんですか?」

 冷静に尋ねた要を、田中は見開いた目で見つめる。

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