怪事件捜査クラブ~十六人谷の伝説~
要が振向くと、上河内が笹崎の首を絞めようとしていた。笹崎は必死で抵抗している。
「笹崎君! 上河内君!」
ジャブダルが叫びながら止めに入る。そのとき、要の耳が、ピピッという音を捉えた。
『要、どうした? 何があった?』
男の声がイヤホンを通して要に聞こえる。
「なんでもない」
『なんでもないことないだろ。窓ガラスが割れたぞ』
「とにかく、今は入ってくんな」
要はぶっきら棒に告げて、イヤホンを外す。
「うわあああ!」
奇声を発しながら、田中が要に向ってきた。要には凶暴化しただけの田中に見えたが、由希には別の者に視えていた。黒い煙は田中を包み、田中の姿を別人に変えていた。中年の男。痩せ型で、髪は薄く、頬はコケ、舌がない。
要は男の追突をひらりとかわした。男はつんのめって、倒れる。
(間違いない。田中さんは悪霊に憑依されてる……! 上河内さんは、悪霊の影響を受けてしまってるんだ!)
「とりあえず上河内さんをペンションから出してください! 憑依体質の彼女には、ここは危険です! 要ちゃん、外で待機してる警察に突入してもらって! 田中さんを捕まえなきゃ!」
「うぎゃあああ!」
男は奇声を発した。その瞬間、ソファが浮かび、由希目掛けて飛んでくる。由希は、間一髪で避けた。ソファは鈍い音をたてて床板を割り、ひっくりかえって止まった。
『逮捕なんて、させない。内巴は殺すの』
不気味な声が聞こえて、由希の背筋が凍った。背後に大島がいる。振向かなくても、何故か大島だと理解出来た。
『でも、内巴の中にアノ人がいる。内巴を殺せない……悔しい。憎い。内巴が憎いっ!』
「あなただって、ひどいことをしたのよ」
由希は振り返った。強く、清い瞳で大島を見据える。
『私は、悪くないわ!』
ヒステリックに叫んだ瞬間、何かに気づいてハッとした。視線の先に、花華が立っている。
『どうして……どうして、ここにいるの?』
動揺して、声が震えた。大島はもう一度、叫ぶように言った。
『どうしてここにいるの!』
「ずっといたよ。あなたが見ようとしなかっただけ。彼女に言うことはないの?」
由希は優しく、けれども咎めるように大島に促した。だが、大島はぶるぶると震えると、断末魔の叫び声のような絶叫を上げて、煙のように消えた。

「笹崎君! 上河内君!」
ジャブダルが叫びながら止めに入る。そのとき、要の耳が、ピピッという音を捉えた。
『要、どうした? 何があった?』
男の声がイヤホンを通して要に聞こえる。
「なんでもない」
『なんでもないことないだろ。窓ガラスが割れたぞ』
「とにかく、今は入ってくんな」
要はぶっきら棒に告げて、イヤホンを外す。
「うわあああ!」
奇声を発しながら、田中が要に向ってきた。要には凶暴化しただけの田中に見えたが、由希には別の者に視えていた。黒い煙は田中を包み、田中の姿を別人に変えていた。中年の男。痩せ型で、髪は薄く、頬はコケ、舌がない。
要は男の追突をひらりとかわした。男はつんのめって、倒れる。
(間違いない。田中さんは悪霊に憑依されてる……! 上河内さんは、悪霊の影響を受けてしまってるんだ!)
「とりあえず上河内さんをペンションから出してください! 憑依体質の彼女には、ここは危険です! 要ちゃん、外で待機してる警察に突入してもらって! 田中さんを捕まえなきゃ!」
「うぎゃあああ!」
男は奇声を発した。その瞬間、ソファが浮かび、由希目掛けて飛んでくる。由希は、間一髪で避けた。ソファは鈍い音をたてて床板を割り、ひっくりかえって止まった。
『逮捕なんて、させない。内巴は殺すの』
不気味な声が聞こえて、由希の背筋が凍った。背後に大島がいる。振向かなくても、何故か大島だと理解出来た。
『でも、内巴の中にアノ人がいる。内巴を殺せない……悔しい。憎い。内巴が憎いっ!』
「あなただって、ひどいことをしたのよ」
由希は振り返った。強く、清い瞳で大島を見据える。
『私は、悪くないわ!』
ヒステリックに叫んだ瞬間、何かに気づいてハッとした。視線の先に、花華が立っている。
『どうして……どうして、ここにいるの?』
動揺して、声が震えた。大島はもう一度、叫ぶように言った。
『どうしてここにいるの!』
「ずっといたよ。あなたが見ようとしなかっただけ。彼女に言うことはないの?」
由希は優しく、けれども咎めるように大島に促した。だが、大島はぶるぶると震えると、断末魔の叫び声のような絶叫を上げて、煙のように消えた。
