人魚の標本


「あのね朱里さん、ここいらでは昔から伝統的に人魚を食べるんだよ。本当は二十歳のお祝いで初めて食べたりするんだけどね」

「なんで先生そんなこと知ってんだよ……」

「僕の苗字の恵比寿って海の神様の名前をお借りしてるんですよ。寄神信仰に縁のある家で……まあそんなわけなので、人魚の管理も長いこと任されているんです」


 人魚、にんぎょ、あれ、なんだっけ、おかしいなー、頭がぼんやりする。

 あやめの顔がぼやけて見える。逃げなきゃいけないのにうまく力が入らない。


「ああ、最初はね、ちょっと眠くなりやすいんだって。大丈夫だよ朱里、私が保健室まで連れてってあげるね。ねえ、海斗くんは結局どうするの? 朱里のこと


 食べなくていいの?」

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