それ以外の方法を僕は知らない
真逆の方向の家まで送っていては、克真くんが家に帰る時間はその倍かかることになる。
楽しんでくれたのは何よりだけれど、もともと私のワガママに付き合わせてしまったことに変わりはないのだ。
それなのに家まで送ってもらうなんて、いくらなんでも申し訳なさすぎる。
そう思う一心で告げるも、彼はそれを許してはくれなかった。
「だめ」と紡いだ克真くんの瞳の中で私が揺れている。
「お前が良くても俺が心配なんだよ。…女の子なんだし、わかったら黙って送られて」
…ドキ。
感じたことのない感覚だった。
なんだろう、この不思議な感じ。ふわふわして、克真くんの声だけが鮮明に聞こえる。
「わ、わかった…」
「よろしい」
「……ありがとうございます」
少しばかり強引ではあったけれど、結局私は克真くんに送ってもらうことになった。
家に着くまでの間は、どこか感じる恥ずかしさを隠すように映画の感想をひたすら口にしていたけれど、そんな私の話を、克真くんは時々相槌を打ちながら聞いてくれていていた。