どうして・・

···がむしゃらに


美春の父親も美春も
お互いに声をはっしたのは
最初の父親の言葉だけ。

こんな親子もいるのだと
驚きと共に自分がいかに
両親に愛されているかを知った。

「それでは、池谷さん
あなたは、妻である美春さんに
日常的に暴力をふるい
妊娠している美春さんのお腹を蹴り
お腹の赤ちゃんを流産させた
と、美春さんは言ってますが。
それは、本当ですか?」
と、先生が訊ねると
池谷さんは、
「日常的に暴力をふるうことなど
ありません。
口喧嘩になった事はあります。
度々、無心をしてくる服部先生に
嫌気がさすのと
豪遊ばかりを繰り返す美春に
その時一度だけ
頬を叩いた事はあります。
それと、美春の妊娠は、
私の子では、ありません。
妊娠の時期に私は日本に
いなかったのですから。
そちらの男性の子かと思いましたが
違いますか?」
と、言われて
先生は、
「それは、違います。
その時には、川本さんは
奥様には、会っていませんから。」
と、言うと
「それでしたら、遊び相手の
子供でしょう。
まあ、妊娠が本当でしたら、ですが。」
と、呆れながら池谷さんは言い捨てた。

美春の旦那さんの言葉に
新は、唖然としているようで
そんな、新を無視して先生は、
「それで、今このような状態ですが
池谷さん、あなたはどうされますか?」
と、訊ねると
「先生、この場をお借りして
美春と離婚をさせて下さい。
私が見初めた【服部 美春】と言う
女性は幻だったのだと思います。
この数年、騙されても
無心されても、
これは本当の美春ではない
お義父さんからの無心も
美春の為と我慢してきましたが
もう、疲れましたし
我慢の限界がきました。

私は、幸せな家庭を願っただけ
なのです。
離婚届けは、ずっと持ち歩いて
おります。」
と、言うと池谷さんは、
離婚届けの用紙を先生に見せた。

池谷さんの欄と
証人欄には、名前が記入されていて
美春の欄だけが残っていた。

先生は、美春の前に置き
記入するように言った。

美春は、渋々記入した。

その書類を確認して
先生は、用紙を池谷さんに渡すと
池谷さんは、
「ありがとうございます。」
と、先生に言った。

先生は、
「それだけで宜しいですか?
浮気や豪遊を繰り返していたのでしょ?
請求しなくても大丈夫ですか?」
と、言う。
すると、池谷さんは、私を見て
「妻が大変な事をしまして
申し訳ございません。
美春の分は私の方で
お支払をいたします。」
と、頭を下げた。

私は、首を横にふるが
池谷さんは、
「結婚式の時は、
まだ、私の妻で池谷を名乗っております。
当然、私が責任を持つことになります。
それに、あなたの手に渡る物が
汚ないお金であって欲しくない
というのが私の本音です。」
と、言われた。

先生は、
「ありがとうございます。
手続きは後程、御連絡させて
いただきます。
日垣さんへは、これで良いとしまして
美春さんの豪遊代と
それに伴いあなたの顔をずいぶん
潰したのではないかと
考えますが、その請求は宜しいですか?
それと、浮気相手である
川本 新さんへの慰謝料は
どのようにされますか?」
と、訊ねると
「そうですね。
本来なら、無断で人のお金を
使った分を返金して欲しい所ですが
今すぐにでも、この人との
関わりを絶ちたいと思っていますので
着の身着のままで、出て行って貰い
カードから預金は全て
凍結させて貰います。
そちらの男性には、こんな美しく
利発的な女性を無下にした
代償は大きいと思いますが
彼は、ご両親の痛み
日垣さん一家への痛み
そして彩羽さんへの償いを
きちんと味わい
世の中の厳しさを學ぶためにも
500万円を請求させてください。
私へは、一年で構いません。
奥菜先生に書類を作成して
頂きます。」
と、先生に伝えてから

新に向かい
「ですが···あなた。
この女を養うのは
並大抵ではありませんよ。
お可愛そうに。」
と、言った。

先生は、
「ありがとうございます。
池谷さんの依頼も早急に
させて頂きます。」
と、頭を下げた。

池谷さんは、私と私の両親に
頭を下げて会議室から出て行った。

先生は、入り口まで
池谷さんを見送り
戻ってから
「それでは、これで、終了いたします。
奥菜の仕事報酬は、お二人に
請求させて頂きますので
宜しくお願い致します。
お二人は、がむしゃらに働かないと
支払いはできませんよ。

心に残る大きな傷は、
目にみえるものではなく
薬で治せるものでもありません
だからと言って、
お金で償えるものではありませんが
あなた方は、それをやるしか
ありません。
二度と彩羽さんには
接触できないですからね。

それでは、お帰りになられて
結構ですよ。
あっ、新さんあなたが
彩羽さんと暮らすためにかりた
部屋は、彩羽さんの物は
全て片付けておりますから
あなたが使用してかまいません
もちろん、マンションの家賃は
あなたの支払いとなっています。」
と、言われたが
新は、立ち上がる事も出来ずにいた。
< 28 / 96 >

この作品をシェア

pagetop