ニセモノの白い椿【完結】
木村と私とで、おそるおそる覗き込む。
「これは凄いね……」
木村を傷付け私をつけ狙っていた男が捕まったという一報と共に、遅れてやって来た段ボール箱の中はカオスと化していた。
「ヒドイ」
しおれたキャベツ、変色し始めている小松菜、みずみずしさのかけらもないトマト、その辺のスーパーで買ったと思われるふりかけ、かつおぶし、そうめん、そしてピンクの薔薇柄のエプロン。
母よ、何故、エプロン――?
野菜や食料品に紛れて入っていたエプロンを手にして、顔をしかめる。
「それも、凄いね。ピンクに薔薇……。でも、いいんじゃない? 若奥様って感じで」
木村が笑いをこらえている。
「若奥様ってね……。こんな柄のエプロン、離婚した娘に送って来るものとして、どうかと思わない? 本当に、うちの母親って、無邪気というか呑気というか鈍感というか」
せめて、シンプルな柄のものを送ってくれっていうの。
「生田さんに似合うと思うよ。さすが、母親だな」
「……そう言いながら、木村さん、さっきから笑いこらえてるみたいだけど?」
じろりと睨みつける。
「笑ってない、笑ってない。いつか必要になるまで取っておけば?」
口元を押さえながら、木村が立ち去る。
笑ってるじゃないのよ。
あの夜から。私たちは、これまでと同じ距離感を保っている。
あの夜抱きしめられたことなんて、実は夢だったんじゃないかと思うほど。
あれは友情の証だと、そう思ったくせに。
そんなことを考える自分が不思議だけれど、これでいいのだと思う。
木村と私の関係は、”友情”が一番似合っている。
それは紛れもない私の本心だ。
それなのに、あの時の木村の胸の温かさが身体の奥底に残っているから、困るのだ。
あの、大きな手のひらの感触も。
早く、その手のひらの傷が消えるようにと、心の中で祈った。