ニセモノの白い椿【完結】
月日が経つのは早いもので、気付けば6月が終わろうとしていた。
ここにお世話になるのは、最長で三か月-―。そう約束していた。
もう半分を過ぎたことになる。
木村の話では、私が住んでいたあのエリアは、女性の一人暮らしには向かいということだった。
『あんまり、治安がいいといは言えないから。他の場所にした方がいい』
どうりで家賃が安いと思った。
東京に土地勘がない人間にはピンと来ない部分もあるけれど、確かに、肌で感じた雰囲気は決していいとは言えなかった。
どれだけ焦って部屋を探していたんだか――。
ネットで賃貸住宅情報を見ても、少し条件がいいと思うとすぐに家賃が跳ねあがる。
はぁ……。
自分の部屋で、床に突っ伏す。
『焦る必要ない。ここには気にせずいてくれていいから、その代わり、ちゃんといいところを探して』
木村は、そう言うけれど。
いつまでも、甘えていられないよな――。
これから先の自分の人生だって、考えれば考えるほど目を背けたくなるけれど、背けてばかりもいられない。
いつまでも派遣社員で生きて行けるのか。
いざとなれば頼れる両親だって、いつまでも元気でいられるわけでもない。
もっと真剣に考えなければ、あっという間に年を取る――。
突っ伏したまま、目を閉じる。
根本で、自分に自信を持てないのは自分が何も持っていないからだ。
一人で生きていける術も、強さも。私は、器が綺麗なだけの空っぽの人間ーー。
その唯一の長所の顔だって、これから先劣化していくだけ。余計に惨めなだけだ。
……って、我ながら辛辣だ。自分に向ける辛辣な言葉はナイフのようだ。
自分で傷付いてどうする。
でも、それは紛れもない真実だ。
東京での暮らしに慣れるのに必死で、とりあえず横に置いておいたこと。
でも、一度そこに思いを馳せれば、真っ逆さまに暗闇に放り込まれて行く。