ニセモノの白い椿【完結】
「驚いたよ。君が、そんな口汚い言葉を吐くなんてね。本性を隠していたわけだ」
蔑むように私を見下ろした。
「おまえを捨てた僕の判断は間違っていなかったってことだ」
手のひらを返したように、態度を豹変させる。
「この僕が、わざわざここまで出向いてやったのに。
まあ、せいぜいこの先の長い人生を苦労して生きて行けばいい。今の仕事も所詮派遣だろ。手に職もない、外見だけが取り柄の女がどうやって生きて行くのかは知らないがな。
ああ、それだけじゃなかったか。その、根性の悪さも持ち合わせているんだったな。
ずっと僕に気付かれずに清楚な女を演じていたわけか。大した女だ」
それが強がりなのかプライドなのか知らないが、その目は完全に私を見下していた。
「そうやって、いつまでもお高く留まっていればいい。そんなおまえを本気で愛する男なんていないだろう。おまえは、いつまで経っても人形だ」
醜く歪んだ笑みは、一度は愛を囁いた男のものとは思えない。
そんなこと、
あんたに言われなくても分かってるーー。
本当の自分を偽って、装い続けて。それを脱ぎ捨てた自分は、哀しいほどに空っぽだってこと。
そんな私が、本気で誰かに愛されることなんてないってこと。
「人形に心を砕く男なんていないからな――」
「――その辺にしたらどうですか」
その声に、振り返る。
いつからそこに――?
私たちから少し距離を置いたところで、壁にもたれ腕を組んで立っていた木村の姿があった。
どこから見られていたのか。まったく気付かなかった。
こんなところ、木村には見られたくなかった――。
思わず、木村から顔を逸らす。
「おまえは……?」
木村に気付いた元夫が、視線を木村に向け声を漏らす。
「こんな所でするような会話じゃないですね。ここがどこかだか分かっているでしょう? 職場のそばですよ。仮にも夫だった人だ。彼女の迷惑になるようなことはしないというのが最低限のルールでは?」
木村――?
壁から身体を離し、こちらへと近付いて来る。