ニセモノの白い椿【完結】
一体、何を言うつもりだ――?
木村の厳しい眼差しを、ただ訳も分からず見ていることしかできない。
そんな私の横を過ぎて、木村が元夫の真正面に立つ。
その行動の意味が分からないから、言うべき言葉も見つからない。
まさに、固唾を飲んで見ているだけだ。
「誰だ、と聞いている」
誰って――。
元夫が怪訝な目で木村を見ていた。でも、木村が答える前に、嫌な笑みを浮かべた。
「……ああ、そいうことか」
勝手に納得したように、わざとらしく頷いて。
「椿の新しい男か。さすがだな。僕にしていたみたいに演技をして男をたぶらかして。新しい相手がいるから、あんな強気な発言をしたってわけか。でも、残念だったな。この男にも、おまえがたった今曝け出した本当の姿を見せてしまったんじゃないか? あんな姿を見れば、男は冷めるというものだ」
そう、吐き捨てた。
「違う。この人はそんなんじゃない!」
私は咄嗟に声を上げていた。
この男は大きな勘違いをしている。木村を、私の恋人か何かと誤解している。そんな勘違いをさせて木村に迷惑をかけることだけはしたくなかった。
でも、否定した私を制止すると、木村は元夫を睨み口を開いた。
「だから、ここがどこだか考えろと言ったでしょう。場所を変えましょう。話はそれからだ」
ただただ冷静にそう言ったかと思うと、突然木村が私の肩に手を当て身体を引き寄せた。
「椿さん。それでいいですね? 大丈夫。あなたは何も心配しなくていい」
”椿さん”って、何――?
そんでもって、肩を抱くこの手はなんだ――?
私は、ぎょっとして木村を見上げた。