ニセモノの白い椿【完結】




「ほんっと、ろくでもない男だよね。最後の最後まで! 去り際くらい、かっこよく去れないのかってーの」

コンビニで大量の酒を買いマンションに戻って来てから、リビングで二人して飲みまくっている。
アルコールがちょうど身体に回り始めて、私は心のままに喚いていた。

「あれはないわ。同じ男としても、あれ、ダメな奴。絶対選んじゃダメな男」

腕をぶんぶん振っている。
木村も珍しく少し酔っているみたいで、やたらと身振り手振りが大きい。

「あんな奴と結婚したこと、人生最大の汚点だ。こんな風に、ダメ夫木村さんに晒しちゃって、恥ずかしいんですけど!」

本当に見られたくなかった。この日のあの男とのシーンのどれもこれも。
またすぐに鮮明に蘇って来て、振り切るように缶ビールを一息に飲み干した。

「――恥ずかしいなんて思わなくていいよ。あなたの元旦那、見るの、今日が初めてじゃないから」

「……は?」

空になった缶ビールを手にしたまま、木村を凝視した。

今、聞き捨てならないことを言われた気がする。

「実はさ、生田さんに初めて会った日、あのバーで声を掛ける前に、見かけたんだ。あなたのこと」

木村と初めて会った日。バーで酔いつぶれた日だ。
その日は……。

そう。そもそも酔いつぶれた原因は、やっぱり元夫のことが原因だった。

巨乳女と元夫が二人して私の前に現れた――。

「それって……」

もしかして、あの場面を見られていたということ――?

時間が巻き戻されるみたいに、あの日のことが蘇って来る。

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