ニセモノの白い椿【完結】

「……ホント、だよね。交際してからすぐに、プロポーズされて結婚した。プロポーズ、物凄く強引なやつだったんだよ。『君は美しい。こんなにも美しい人、初めて見た。どうしても君と結婚したい』なんてね。歯の浮くようなこと言われて、私、頷いていた」

周囲から浮かないように、男性も女性も敵を作らないように。
目立つ外見を謙虚さで薄めて、イメージを壊さないように、外ではいつも演技して。

そういうことに疲れていたのかもしれない。
結婚してしまえば、ただ一人のためだけに装えばいい。

ただ一人のためだけに、イメージを守ればいい――。そんな風に思って。

「でも、結局、浮気されて離婚されて。今こんな状況になっているのは、全部自分のせいなんだよね。これまでずっと、本当の自分を隠して来た自分のせい。自業自得」

頬をテーブルに当てて顔を横に向けていたけれど、テーブルに突っ伏した。

「でもね、隠しているのも結構大変なんだよ。あの人の前で、あの人の私に対するイメージを守っていたのは、愛されていたかったから。せっかく結婚したんだもん。愛し愛されたい。本当の私を知られて、心が離れて行ってしまったらって、怖かったんだ。本当の私なんて、性格が悪いだけの空っぽの女だから」

がっかりされないようにと努力した。それが私にとっての愛情の証だった。

テーブルに雫が落ちる。
この涙は、自分に対する虚しさだろうか。

「今日初めて、あの人に本性曝け出して。その時の、あの冷めきった目が、すべてだった。そりゃあそうだよね。裏表がある女なんて、サイアクに決まっているし。あの人ばかりを責められない。私だって、同じくらい最低で……っ」

なんで泣いてしまうんだろう。
この涙は一体なんだろう。

「ご、ごめん。お酒飲んだからかな。涙もろくなってる――」

うつぶせたまま、涙をこらえる。
その時、覚えのある大きな手のひらの感触を頭に感じた。
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