ニセモノの白い椿【完結】
「――最低なんかじゃないよ。あなたが、旦那さんを愛していたってこと、分かってる。愛していたから、自分を偽ってまで頑張っていたんだ。ちゃんと愛していたからこそ、今、あなたは涙を流してる」
何度も私の頭にぽんぽんと優しく触れる。
そんなことをされたら、余計に泣けてくるのに。
「生田さんと暮らして、少しだけど、垣間見えた。作ってくれた料理を食べながら、”ああ、こんなにも心のこもった料理を作ってあげていたんだな”とか、”こんな風に、家事をして帰りを待っていたんだろうな”とか」
優しく労わるような声が、涙に暮れた私を包み込む。
優しい声と優しい手のひらが、私から哀しみを引き出して涙を溢れさせる。
「確かに、本当の自分を隠していたのかもしれない。でも、あなたは旦那さんと誠実に向き合っていた。そうだろう?」
ボロボロの自分をなんとか支えるために、強がって元夫を罵って。大きすぎる哀しみを押さえつけようとして来た。
それなのに、木村が私を優しく諭すようにそんなことを言うから胸が苦しくなる。
「だから、大丈夫。失敗したのかもしれないけど、後悔はしないはずだ。時間が経てば、必ず思い出として振り返ることができるようになる。消したい過去なんかにはならないよ」
溢れ落ちる涙が、止まらない。
「たとえ、悲しい結末だったのだとしても。ちゃんと愛していた人だったんだから、その過去は、あなたにとって恥ずべき過去なんかじゃない」
木村のその言葉に、更に涙が溢れた。
この胸の苦しみは、きっと、この先前を向くために必要な痛み。
偽りのない感情と向き合わなければ、私は、本当の意味で元夫との生活を過去のことにはできない。
そのことを木村に教えてもらった気がする。