ニセモノの白い椿【完結】

「……美味しい。本当に、美味しいです!」

メニューは、私でも知っているものばかりだった。
ラタトゥイユにフランスパン、野菜サラダに、サーモンのマリネ。
かぼちゃのポタージュ。それに、パエリアが並んでいた。
そして、何故か、肉じゃが。

「本当ですか! 良かったぁ。私、あんまりお洒落なメニューって作れなくて。これでも、かなり背伸びして作ったんですけど。お口に合って良かった!」

雪野さんが表情をくしゃっとして笑う。

何、その笑顔。めちゃくちゃ可愛いんですけど。

決して派手なつくりの顔ではない。ヘアスタイルも長い髪を一つに結ぶシンプルなもの。どちらかと言うと地味目な雰囲気だと思う。
だけど、なんだろう。この人の笑顔は人の心を癒す。

「とっても美味しいですよ! 優しい味で、私は好きです」

私まで作り物の笑顔じゃない素の笑顔になって、そう答えていた。

「本当だ。雪野ちゃん、美味いよ。これ、全部雪野ちゃんが手作りしたの?」

木村がフォークを手にしながら彼女に聞く。

「いえ、創介さんも手伝ってくれたんですよ!」

またまた嬉しそうに雪野さんが声をあげる。

「え? なに、創介、料理なんてするの?」

木村が大袈裟なほどに驚いた顔をした。
確かに。台所に立つイメージも包丁を持つイメージもまるでない。

「俺だって料理くらいする。このサラダは俺が作ったんだ」

「なんだよ、サラダかよ。サラダなんて、洗って切って盛り付けるだけだろ。そんなの料理とは言わないよ」

どこか得意げだった榊さんを、木村が一蹴した。

「でもね、この肉じゃがも、創介さんが手伝ってくれたんですよ? 少しずつ練習して、今ではこんなに上手く具材を切れるようになったんです!」

雪野さんが肉じゃがの入った器を手にして木村に訴えていた。
その必死に夫をかばう姿が、また可愛い。

「……雪野ちゃん。それ、全然フォローになってないよ。野菜が切れるようになったくらいで創介が作ったことにはならないだろ?」

「でも、前はもっと形がいびつだったんです。でも、今はこんなに均一で――」

「……雪野、もういいから」

彼女が必死になればなるほど隣に座る榊さんがいたたまれなくなったようで、雪野さんを制止していた。

そんなやり取りが微笑ましかった。

< 129 / 328 >

この作品をシェア

pagetop