ニセモノの白い椿【完結】
「そうみたいです。だから、多分、いい部分も悪い部分も全部お互い見てきている。ただ気が合って仲良しっていう関係じゃなくて、それ以上に太い絆みたなものがあるのかな、なんて外から見ていると思います」
だから、友人というより兄弟に近い感じもしますけどね――そう言って雪野さんが笑った。
「……でも、私、今日、木村さんの新しい顔を見た気がします」
雪野さんが食器から手を離して、私の顔を見た。
「新しい、顔?」
「はい。私が知っている木村さんは、誰にでも社交的で人当り良くて。でも、それはどこか一線を引くためのものにも見える。その一方で、創介さんや私には、お兄さんみたいなんですよ。こうと思ったら一直線の創介さんをたしなめたり、言い聞かせたり。でも、生田さんに見せる表情は、そのどれとも違った」
「違いますか……?」
半信半疑で雪野さんを見つめ返す。
「少なくとも、私にはそう見えました。でも、それが本来の木村さんなのかなって」
「そうかな。そんな特別なものには思えないけど」
そう笑って、手元の食器に水道水を流した。
「木村さんのことをよく知っているわけじゃないですけど、でも、木村さんって不思議な人ですよね。一見、軽そうに見えるけど、そういう風に装っているのかと思えたり。実は一番、いろんなことを考えている人なんじゃないかと思う時があります。自分のことより、相手のことを考えちゃう人。誰かが傷付くのを見たくない、優しい人」
皿の汚れを軽く落としながら、隣に立つ雪野さんの声にただ耳を傾ける。
「今日、木村さんが生田さんのことを『大事にしたいと思う人』とおっしゃった時、本当にそうなんだろうなと思いました。木村さんは、人当りはいいけど、誰とでも友人になるような人じゃない。大事に出来ない人と軽はずみに人間関係を築くようなことはしない」
いつの間にか、私は雪野さんを見ていた。その真摯な眼差しから逃れられなかった。
「――なんて、私の勝手な想像なんですけど。すみません、一人で喋ってしまって」
「ううん。ありがとう」
そんなことを私に言ってくれたのは、何かに気付いたからだろうか――。
まさかそんなことはないと思うけれど、それでも、雪野さんの言葉が胸にすっと入り込んで来たのは確かだ。