ニセモノの白い椿【完結】

「そうだ。せっかくだし、ワインのつまみになるようなもの、作りましょうか」

なんとなくしんみりとしてしまった空気を払拭したくて、雪野さんに言った。

「そうですね。何が、いいかな。私、そういうメニュー、本当に思いつかなくて」

「簡単なものでよければ、私、何か作りましょうか?」

困った顔をした雪野さんにすぐさまそう提案した。

「本当ですか?」

「はい。あるもので適当に作りましょうか」

笑顔で答えると、雪野さんが満面の笑みになる。
二人で冷蔵庫に顔を突っ込み、ちょうど良さそうな具材を使わせてもらうことにした。

「……すごい! 包丁さばきも手際もよくて。お料理、よくされるんですね?」

あまりの感動のされ方に、照れてしまう。

「いえいえ。木村さんから聞いているかもしれませんが、ついこの間まで主婦だったので料理は人並みにはできるんですよ。独り身に戻ってしまいましたが」

敢えて軽い調子でそう言った。

「そうだったんですか……。木村さんからは、私は何も聞いていませんよ?」

「そう?」

なんだ、木村は何も言っていなかったのか。

隣に立つ雪野さんは、それ以上何も言わなかった。

きっと言葉に困らせているよね……。

何を言うべきか言わないべきか。きっとそういうことを深く考える人なんだと分かる。
だから、これ以上気を使わせないように、私から話題を振った。

「あの、少し雪野さんのことを聞いてもいいですか?」

「はい。なんですか?」

ブロッコリーを洗い適当な大きさに切って鍋に入れる。その横で、雪野さんにはジャガイモを洗ってもらっていた。

「木村さんから、雪野さんは、普通のご家庭出身の方だと聞きました。榊と言えば、誰もが知る超名門の家ですよね? その……、いろんなこと、怖く、ありませんでした?」

こんなことを聞いてしまったのは、自分と重ねてしまったからだろうか。
私にとっては、木村の家だって相当に格上で、対等なんかじゃない。

「あ……。すみません。こんなこと不躾でしたよね」

聞いてしまってから自分の図々しさに気付く。
雪野さんと私では全然置かれている立場が違う。私は家の違いだけじゃない。バツイチというおまけまでついてきている。

「いえ、いいんです!」

慌てふためく私に、雪野さんが自分のことを話してくれた。



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