ニセモノの白い椿【完結】
「部屋を探す話なんだけど……。やっぱり約束の3か月一杯、8月中旬までお世話になっていいかな……?」
「え?」
今度は木村が驚いたように私を見つめる。
「本当なら、期限の3カ月なんて言わずに出来る限り 早く部屋を探すべきなんだけど、もう少しお世話にならせてくださいってお願いです!」
思い切って、そう告げた。
「なんだよ。そんなの、最初からゆっくり探せばいいって言ってるだろう?」
木村が私に向き合い、すぐさまそう言ってくれた。
「ううん、最初に約束したことはきちんと守りたいの。でも、その期限一杯はよろしくお願いします」
深々と頭を下げると、頭上から木村の声が降って来た。
「――もちろんだよ」
「ありがとう」
私は、木村のことが好きだ――。
この気持ちは、私だけのもの。
そうだよね、雪野さん。
誤魔化したりないものにしたりしない。
そして、木村に迷惑をかけるつもりはない。この関係をぶち壊して、木村の心に負担を負わせるのは私の本望じゃない。
――生田さんなら構わない。俺のことを絶対に好きにならないから。
出会った頃に木村は私にそう言った。
木村が私に特別な感情を持っていないことは分かっている。
木村は、人が傷付くことを極端に嫌う。私が木村を想っていると知ったら、きっと苦悩するだろう。それが分かるから、打ち明けるつもりもない。
だから、あと少し――。
木村と二人で過ごす時間を私にください。
大事に大事に、過ごすから――。