ニセモノの白い椿【完結】
表面上は、これまでと何一つ変わりなく、過ごしていた。
「私、時間の無駄遣いをしていました」
「……え?」
昼休憩のラウンジで、向かいには白石さんがいる。
席に着くなり、投げやりな口調でそんなことを言い出した。
「きっと、生田さんもお気付きでしたよね? 私が木村さんのことをいいなって思っていたこと」
乱暴な手つきでお弁当を広げている白石さんを凝視する。
その問いに、どう答えようかと思案していると、私が口を開く前には白石さんが喋り出していた。
「生田さんと木村さんがどんな関係なのか勘繰ったりしましたけど、全部私の見当違い。ホントに、我ながらバカみたい」
「……一体、どうしたんですか?」
一応、聞いてみることにする。
「木村さん、ちゃんと結婚相手が決まってるらしいんです。それを、銀行内の知り合いから噂を聞いて。とーっても、ご立派なおうちの方らしいです」
心というものは、どうしてこうも正直なのだろう。
無防備に、動揺して傷ついてしまう。
白石さんの口にしたことは、何も今更驚くようなことではないはずで。
木村が頭取の息子だという家柄も知っていたこと。
そういうことがあったって不思議じゃない。むしろ、当然のことーー。
「ホントにバカ。少し考えれば分かることだったのに。だから木村さんはあんなにガードが固かったんですよね」
白石さんも同様のことを口にした。
「時間を返してほしいです。木村さんのことを考えていた時間、巻き戻したい」
白石さんの声が、遠くなる。
全てが、繋がる。
これまで、木村が言っていた言葉、全部がパズルのピースのようにはまり出す。