ニセモノの白い椿【完結】


表面上は、これまでと何一つ変わりなく、過ごしていた。

「私、時間の無駄遣いをしていました」

「……え?」

昼休憩のラウンジで、向かいには白石さんがいる。
席に着くなり、投げやりな口調でそんなことを言い出した。

「きっと、生田さんもお気付きでしたよね? 私が木村さんのことをいいなって思っていたこと」

乱暴な手つきでお弁当を広げている白石さんを凝視する。

その問いに、どう答えようかと思案していると、私が口を開く前には白石さんが喋り出していた。

「生田さんと木村さんがどんな関係なのか勘繰ったりしましたけど、全部私の見当違い。ホントに、我ながらバカみたい」

「……一体、どうしたんですか?」

一応、聞いてみることにする。

「木村さん、ちゃんと結婚相手が決まってるらしいんです。それを、銀行内の知り合いから噂を聞いて。とーっても、ご立派なおうちの方らしいです」

心というものは、どうしてこうも正直なのだろう。
無防備に、動揺して傷ついてしまう。

白石さんの口にしたことは、何も今更驚くようなことではないはずで。
木村が頭取の息子だという家柄も知っていたこと。
そういうことがあったって不思議じゃない。むしろ、当然のことーー。

「ホントにバカ。少し考えれば分かることだったのに。だから木村さんはあんなにガードが固かったんですよね」

白石さんも同様のことを口にした。

「時間を返してほしいです。木村さんのことを考えていた時間、巻き戻したい」

白石さんの声が、遠くなる。

全てが、繋がる。

これまで、木村が言っていた言葉、全部がパズルのピースのようにはまり出す。






< 144 / 328 >

この作品をシェア

pagetop