ニセモノの白い椿【完結】
「生田さんは、手伝わなくていいって言ってるだろ」
「何もしないのも落ち着かないし、別にいいの!」
食べ終わった食器を、二人並んで片づける。
この会話も、いつもの決まりきったものだ。
「いつもそう言ってるんだから、同じことばかり言わないで」
「それを言うなら、そっちもだよ? 生田さんは料理を作ってくれる。俺が片づける。役割分担だって言ってるのに」
なんだかんだと言い合いながらこうして一緒にいられることが楽しいのだから、余計なことは言わないで欲しい――!
と心の中で悪態をつきつつ、溜息を吐く。
「――だーかーら。その皿は、俺がもらいます」
「いいって言ってるのに――っ、きゃっ……!」
木村が私が手にしていた皿を奪おうとしたので、ついそれを奪い返そうとして、勢いあまってその皿が滑り落ちてしまった。
「ご、ごめんっ!」
フローリングの床の上で綺麗に真っ二つに割れて、それ伴い小さな破片が飛び散る。
慌ててしゃがみ込み、破片を拾う。
「ダメだ! そんなの触らないで――」
木村の切り裂くような声で、肩がびくつく。それと同時に、指の先にちくりとした痛みが走り、鮮血が流れだした。
「生田さんっ。血が出てるじゃないか! だから触るなと言っただろ」
同じようにしゃがみ込んだ木村が間近に迫る。
「これくらい、大丈夫だから。そんなに大騒ぎしないで」
私の声なんて耳に届いていないみたいに、迷いなく私の手を取った。
「破片が残っていたら大変だ。少し、水で流そう」
こんな風に身体が近付いただけで、手を触れられただけで、恐ろしいほどに心臓が跳ね返る。
「じ、自分で、出来るからっ」
その手を引こうとしても、木村の力の方が強くてびくともしない。
こんなに至近距離でいたら、この胸の騒ぎが聞こえてしまいそうで落ち着かない。
って、中学生の初恋か――っ!
と心の中で自分にツッコミを入れる。