ニセモノの白い椿【完結】
「どうして、こんな場所……」
半ば強引に連れて来られた場所は、表参道支店からタクシーで15分ほどのシティホテル。
その高層階にあるバーだった。
「こういう場所の方が、落ち着いてゆっくり話せますから」
照明が極限まで落ちて、窓の向こうに広がる夜景の効果を最大限生かしたつくりになっている。ムーディーな生演奏が会話を邪魔しない程度に流れていた。
窓際のソファ席を、立科さんは選んだ。
向かい合う形じゃなくて、並んで座るように置かれたソファに、本能的に嫌悪感を感じる。
「言っておきますけど。私と木村さんは、特別な関係でもなんでもありませんから。立科さんが見たというのは、きっと、私と木村さんの共通の知り合いのマンションだと思います、だから――」
こんなところで立科さんとゆっくり飲む気になるわけもない。さっさと本題に入って解放してもらいたかった。
立科さんが、いつ、どの場面を見て言っているのか分からないが、とにかくなんでもいいから誤魔化さなければと、それしか頭になかった。
「生田さん。少し、落ち着いてください。せっかく来たんだから、飲みものを頼んでからにしませんか」
さっきから、言葉だけは丁寧なものなのに、その態度すべてに威圧感がある。
「勝手に頼みますね」
そう言って、自分と私にカクテルを注文していた。
「あのマンションがどこだろうが、関係ないと思いませんか?」
グラスを口にすると、立科さんがやっと本題を口にした。
「どうしてですか?」
「まず。生田さんと木村は個人的付き合いはないとお互いに言っていた。それなのに、休日に二人して歩いていた。ここにまず一つの嘘があります。そして。僕が見たのがマンションから出て来た二人。それも事実だ。そのことを、誰かに言ったとして、それをどう解釈するか。そんなのそれぞれの自由でしょ」
「そんな……っ」
立科さんはあくまで淡々と話しながら、その口調の端々にある種の怒りが滲む。