ニセモノの白い椿【完結】

「それで二人は、付き合っているんですか? もしかして、もう一緒に暮らしているとか」

今度はストレートに問い掛けて来た。
だから、思わず怯んでしまう。

「そんな関係ではありません。確かに、ここで働くようになってから少しは親しくなったと思います。でも、それだけです」

「そんな話、みんな、信じるかなぁ」

みんなって――。

「他の人が聞いても、きっと僕が考えたことと同じことを思うでしょう。ただでさえ社内恋愛にはうるさい環境だ。そのうえ、木村はただの一行員じゃない。頭取の息子です。職場では広まらない方があなたのためにもなるんじゃないかな」

「……一体、何が言いたいんですか?」

ほんっと、クズだな。この男。

「何が言いたいって。いつも生田さんに言っているじゃないですか。俺と付き合ってくださいって」

「――そうすれば、立科さんが見たことは誰にも言わない。とでも、言いたいんですか?」

腹が立って仕方がない。外用の私の顔がぐらぐらと崩れそうになってしまう。

「そうはっきり言われちゃうと、なんだか哀しいじゃないですか。僕は本当に生田さんのことを好きだと思って言っているんですよ?」

「すみませんが、私は立科さんの気持ちに応えることはできません」

「それは、木村がいるから?」

「だからっ」

本当に分からない男だ。ここで苛立ったら負けだと思うのに、感情を抑えられない。
それでも、なんとか自分の感情をコントロールしようと努めた。

「……だから、木村さんとは何の関係もないことです。これは、あなたと私の間のことでしょう?」

「木村の立場を守っているんですか? 木村の家はいろいろあるみたいですからね。結婚相手はともかく付き合う女性にも、家の目が光っているでしょうから」

「何度も関係ないって言っているじゃないですか!」

ダメだ。オンの生田椿が崩壊してしまう。

「そこまで言うなら、木村に今、電話してみましょう」

「……え?」

ニヤリと嫌味に口角を上げた立科さんが、スーツのジャケットからスマホを取り出した。


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