ニセモノの白い椿【完結】
頭、痛い――。
そして、気持ち悪い。
思わず口元に手をやる。
何度か瞼を瞬かせてから、目を開けた。
目に入ったのは、天井のようだ。
寝てたのか――ってことは、ここは家?
どうやって帰って来たんだっけ。
全然記憶がない。
店を出た記憶も、新幹線に乗った記憶も――。
いや、待って。
この天井、うちの天井と違う気が……。
はっとして、身体を起こす。
ここ、どこ――?
一体どこよ!
「――んん」
え――っ?
一瞬にして身体に戦慄が走る。
だ、誰っ!
私の隣に、知らない男が寝ている。少し呻いたかと思ったら、寝返りを打っていた。
どういうこと? 一体、何?
知らない男、行きずりの――。
咄嗟に自分の身体を見る。服は――すべて着ていた。
でも、身体の震えが止まらない。
私、何やっちゃってんの?
知らない男と同じベッドで眠っている。それは重大なことだ。非常事態だ。
ここがどこかも分からない。
男の身体から勢いよく離れる。
この人――。
少しずつ思い出してくる。
飛び込みで入ったバーで、話し掛けて来た男――。
確か、あのバーで話をして、それから……。
あの時の……男?
自分の身体を自分の腕で抱きしめる。
どうしよう。このまま逃げようか。もし何か犯罪にでも巻き込まれたら――。
震える身体のまま、後ずさった。
「……ああ、起きた?」
「ひーっ」
目を擦りながら男が身体を起こした。やっぱり、バーで会った男だ。間違いない。
そのニヤケた目に覚えがある。
「ど、どうして、私が、あ、なた、のところにいるの」
声が引きつる。
「もしかして、覚えてないの?」
かろうじて頷く。
「本当に?」
もう一度頷く。
「まったく。困った人だ」
呆れたように私を見ている。