ニセモノの白い椿【完結】
「き、むら、さ――」
見上げた先にあった木村の目に、すぐに声なんて出なくなった。
背中のマットレスの感触に現実味を持てない。そのくせに、胸の鼓動だけはうるさいほどに主張する。
射抜くように見下ろされている木村の視線から、目を逸らせない。
酔っているくせに、さっきまであんなにへらへらとしていたくせに。
怖いほどに熱のこもる目が、身動きを取れなくさせる。
金縛りにあったみたいに、身体が固まって少しも動けない。
ただ、視線の先にある木村の目を見つめる。
息苦しくてたまらない。
ゆっくりと距離を縮めるように、その視線が近付いて来る。
その時、私は思ってしまった。
これが、例え酔っているからだとしても。
明日になって、「そんなつもりはなかったんだ」と木村に言われることになっても。
惚れた男に触れられたい。
そんな愚かな本能が私の胸を埋め尽くす。
木村にとっては我を失った夜の、一度きりの過ちなのだとしても、それでも構わない――。
木村の手のひらが私の肩を掴む。
身体中が、目の前の男を求めてやまなくて。
こんな自分がどうしようもなく愚かだと思うのに、その欲望に抗えない
どれだけ後悔することになったとしても、今の自分に、それ以外の選択肢なんかなかった。
好きなのだ。
目の前の男が、たまらなく。
私を見下ろす木村の前髪が頬に触れる時、私は硬く目を瞑った。