ニセモノの白い椿【完結】
「なになに、そんなに怖い顔して」
「驚けば、こういう顔にもなるでしょ」
並べられた色とりどりの料理とは似ても似つかない木村の硬い表情に、苦笑する。
私も私で、結構、いっぱいいっぱいなのだ。
私は木村が好きで。木村も私のことを想ってくれている。
それを知っているのに、何をどうすることもできない。
何も知らないみたいに木村に接するなんて、そんなこといつまでも上手にできる自信ない。
そんな、苦しくてたまらないことを続けるなんて、無理だ。
顔を見れば、同じ空間にいれば、手を伸ばしてしまいたくなる。
自分の気持ちをぶちまけてしまいたくなる――。
そして、木村も。
酔って帰って来た日の私を見る木村の苦しそうな目と、
バーで榊さんに告げていた葛藤が思い出される。
そんな苦悩の日々から一刻も早く解放してあげたかった。
「驚くって、出て行くのは決まっていたことだし。たかだか二週間、早まっただけのことじゃない。それに、永遠の別れでもあるまいし。同じ職場なんだから、結局毎日会うんだしさ」
「そりゃあ、そうだけど……」
なかなか笑顔を見せてくれない木村にやきもきして、とりあえずワインクーラーのスパークリングワインを手に取る。
「とりあえず、飲もう。飲めば、そんな些細なこと気にならなくなるから」
木村が手も口も出せない間に、素早くスパークリングワインの栓を抜き、木村のグラスになみなみと注いだ。
「では! お世話になった感謝の気持ちと、これからの二人の人生に幸あるように祈念して、かぱーい!」
「なに、それ……」
冷たい視線を送って来る木村のグラスに、強引にグラスを合わせた。
「あーっ、冷えてて美味しい!」
喉を通る炭酸の刺激が目に来る。甘く冷たい液体が身体の中へと流れて行った。