ニセモノの白い椿【完結】
「……この三日、あなたのことしか考えてなかった。会いたくて。早く、触れたくて――」
低く擦れた声が途中で消える。その代わりに再び唇が塞がれた。
腰を抱く腕と、背中を這う大きな手のひらから、木村の強く私を求める想いが伝わる。
「全然、仕事が手につかなくて。どれだけミスしたか……分かりますか?」
絡まり合った熱いものが離れて行って、私の額に額を合わせた。
二人の間に、お互いの乱れた息が混じり合う。
「……木村さんが、ミスするなんて、信じられない」
「それだけ会いたかった。気が遠くなるほど遠く感じて。どうにかなりそうだった」
身体中が沸騰して。間近に感じる吐息も、触れる手のひらも、私の本能を引き出す。
「……私もだよ。すごく、会いたかった。だから、ちゃんと覚悟はできてるから――っ」
本能で、この両手が木村の頬へと伸びて。両手で挟むように触れて囁くと、そのまま身体ごと奪うようなキスが降って来た。
つい三週間ほど前までは、毎日帰って来た場所だった。
友人として過ごしたこの部屋で、私は――。
「――今の表情は、反則」
唇を触れ合わせたまま私を抱き上げると、木村の寝室のベッドへと運ばれた。切なげに眉を寄せた木村が私を見下ろす。
「ただでさえおかしくなってるのに、もう、歯止めがきかなくなる。もっと、そんな表情させたいって、見たことない顔、引き出したいって」
どんな顔してるんだろう。きっと、凄く、物欲しげな顔をしているんだろう。
明かりはついていないけれど、カーテンが開け放たれていて、お互いの姿は十分認識できる。
「初めて抱くんだから、優しくしたいってそう思っていたけど。やっぱり無理そうだ」
低く響く声。いつもの木村の声じゃない。欲望を滲ませた、身体の奥底に響く声――。
「あなたを前にしたら、自制心なんか全部吹っ飛んだ」
木村の身体が近付く。触れたくてたまらない身体が私を覆いつくす。
さっきから、心臓なんてぶっ壊れるんじゃないかというほど高速で鼓動を繰り返しているのに、それ以上に近付きたいという気持ちが大きくて。
大きな背中に腕を投げ出した。