ニセモノの白い椿【完結】
ブラウスのボタンを性急に外されている間も、いくつものキスが降って来る。
額に、瞼に、鼻に、頬に、こめかみに、唇に。
その一つ一つ全部が、なんだか私を大切に扱っているみたいで、身体をじんとさせる。
荒々しい手と、もどかしくなるほどに優しい唇。
広げられた胸元に入り込んだ手のひらは、激しいのに、やっぱりどこか優しい。
優しくできない、みたいなことを言っておきながら。
さっきは、取って食われるんじゃないかってくらいに、荒っぽくしておきながら。
こうして私を抱く手は、激しくて優しい。
既に、身も心も目の前の男に翻弄されまくって、処女にでもなったかのように全然余裕がない。
いつの間にかブラウスは肩から落ち、手はしっかりと両方とも握りしめられていて、私を組み敷く木村に素肌を曝け出している。
「……あんまり、見ないで」
「見たいんだ。あなたの全部」
手で隠したいけれど、そうできないから、仕方なく顔を背ける。
「……いつもの生田さんと全然違う。顔、真っ赤にして、恥じらって」
「や……っ」
指を絡めて手を握りしめられて、私の胸元に木村の顔が降りて来る。
「あなた全部で……俺を煽る」
恥ずかしくて死にそうなのに、与えられる愛撫にどうしても声が漏れる。
鼻から抜ける甘ったるい声は、いつも木村に見せている自分とは程遠いもので、懸命に堪えてしまう。
「……声、我慢しないで。声も、表情も、全部知りたい。全部、俺だけのあなたにしたい」
私から欲望を引きずり出すみたいに、指先が激しく私を追い詰める。
「んっ」
優しく滑る唇も、私の身体を隅々まで労わるみたいで身体が甘く疼く。
「好きだ――」
合わさる素肌が心地よくて。緊張して強張っていた身体が、甘く甘く開いていく。
「あなたが好きだ」
「だ、だめ――、私、っ」
緩んだ身体に、感じたことのない快感が押し寄せて。その得体の知れない疼きが怖くて、咄嗟に身体を閉じようとするけれど。木村が私の呼吸に合わせるように愛撫するから、結局その快感に抗えない。
「私、おかしくなりそうで……怖いっ」
「大丈夫。たまらなく、綺麗だ」
こんなの、知らない。こんな気持ちよさ――全然。
「好きだよ。あなたの全部、俺にちょうだい」
身体のいたるところを溶かされて、全身を甘い快感で覆いつくされて。
私を感じて、見つめてくれて。
私を求める激しい目も、甘く囁く掠れた声も。そのすべてで私を上り詰めさせる。
そして、一つになったその瞬間の木村の表情で、快感が身体の真ん中を貫いた。
決して私を置いてきぼりにしない。
抱きしめて、キスをして、お互いを感じながら身体を揺らす。
「好き……っ」
汗ばんだ身体に必死でしがみつく。意識の外で、そう何度も繰り返していた。
「つば、きーー」
ぴったりとくっついた身体はお互いがお互いのものみたいに感じて。
抱かれるんじゃなくて、抱き合う――。
肌を重ねる行為のことを、初めてそう感じた。