ニセモノの白い椿【完結】
「だからさ。俺のためというよりは、生田さんのために雪野ちゃんは動いたのかな。俺に『自分の本当の気持ちを無理やりにでも気づかせたかった』って、ちょっと怒ってたし」
「雪野さん、自分に重ねてくれたのかな」
「……たとえあなたを俺のものに出来なくても、会おうと思えば顔を見られる、友達でいれば、いつでも近くに行けるって、そう思っていたんだ。
でも、それって、本当の意味で近くにいられるわけじゃないんだよな。
友達なら、俺に何も言わずにどこかに行ってしまうこともある。それを止める権利すらない……そう思ったら、どれだけ自分に間違った理屈を言い聞かせていたかを知った」
気付かれないように、零れた涙を素早く拭う。
でも、やっぱり気付いてしまったようで、木村の親指が私の目元を撫でた。
「生田さんも俺を好きでいてくれたのなら、俺は、あなたに辛い思いをさせたね。ごめん」
「ううん。木村さんの判断は、あなたらしい。相手の立場を思う、木村さんならではだから」
それでも、離れなければならないと思ったあの時の気持ちと、そして今、こうして触れ合えることの喜びの、その両方がないまぜになってそれが全部涙になる。
「私のことを想えば、だからでしょう? いろんなことを考えれば、仕方ないことだと思う――」
私がバツイチなのは紛れもない事実。
条件がとんでもなく不都合な女ーー。
「生田さん」
私を腕に抱き横たわっていた木村さんが、突然上半身を起こし私を真っ直ぐに見下ろす。
「俺、両親にきっぱりと言って来た。この先、見合いをするつもりは一切ないって」
「……え?」
私の揺れる瞳を捕らえるように、木村の手のひらが私の頬にあてがわれた。
「結婚相手は、自分で決める。そう宣言してきた」
「そんなこと……っ。突然そんなことを言われて、ご両親はショックを受けられたんじゃない? これまで逆らわなかった息子がそんなことを言いだせば、混乱して――」
その時の様子が目に浮かんで苦しくなる。
「生田さん。あれだけ諦めきっていた俺があなたを捕まえた。その覚悟が、どれだけのものか分かるよね?」
木村の手が私の肩を強く掴む。