ニセモノの白い椿【完結】
「え……っ?」
ぱっと、沙都ちゃんの表情が女に変わる。
以前は、そういう恋心をどこか押し止めている印象があった。精一杯、一歩引こうとしているというか。でも、今の沙都ちゃんは、無防備なほどにその表情に出している。
「時差もあるし、電話一つするのも大変だよねぇ?」
「え、ええ、まあ」
なんて聞いてみるけれど、どうせ大事な沙都ちゃんのためだ。
あの男は、最大限沙都ちゃんに合わせて、出来る限りの手段で接触しているだろうことくらいは想像がついている。
「――でも、いつも私に気を使ってくれて、時間を見つけては電話をくれています」
ほらね。
「愛されてるねー。『沙都、会いたくてたまらない』とか、あの顔で言うの?」
「……」
沙都ちゃんが、咄嗟に目を泳がせる。
図星か。
恋の力は凄い。人格をも変えてしまうのだ。あの、無表情低温男に、そんな歯の浮くようなセリフを言わせるなんて。
そう考えると、私は――。
……おっとっと。
私もまだまだだ。油断すると、すぐに過去の引き出しを開けてしまおうとする。
過去は振り返らない。もう決めたのだ。
そのために、東京にまで出て来たのだから。