ニセモノの白い椿【完結】


「――皆さん、紹介します。今日から、この表参道支店で勤務することになった生田椿さんです」

勤務初日。開店前のミーティングの場で、支店で働く人たちの前で紹介された。
たくさんの見知らぬ人たちの前に立つのは、やはり緊張する。

「ただいまご紹介にあずかりました、生田と申します。以前銀行で勤めてはおりましたが、ブランクもありますし、同じ銀行と言ってもかっても違うと思います。一から学ぶつもりで、そして一日も早くご迷惑をおかけしないで済むよう頑張りますので、よろしくお願い致します」

スタッフの中には私よりずっと若い人もいる。
でも、とにかく謙虚さをアピールするのが何より大切だ。

頭を下げると、ひそひそと少しざわついたのに気付く。

それも、もう想定されていること。いつものことだ。
この顔が、とにかく目立つ。人の目を引いてしまうのだ。
だからこそ、謙虚さが一番。
職場で上手くやって行くにはまず、女の敵を作らないこと。これが鉄則だ。この数年で学んで来た処世術とでも言おう。
だからと言って、男性に対して不自然に距離を取るのも違う。
あくまでも、感じ良く。
人目を引く容姿というのも、楽じゃない。

「じゃあ、よろしくお願いします。とりあえず慣れるまでは、白石(しらいし)さんにいろいろ聞いてくれるかな」

「はい」

そうして紹介されたのが、一緒に働くことになる一般職の社員の女性だった。パッと見、間違いなく私より若い。

「生田さん。分からないことがあれば、何でも聞いてくださいね」

「よろしくお願いします。こちらこそ、何かあれば遠慮なく何でも指摘してください」

「……はい」

ショートボブの可愛らしい女性。それに、とても優しそうな雰囲気を醸し出す人だった。

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