ニセモノの白い椿【完結】
「どうして、そんな驚いた顔してるの? 俺 、あなたの恋人なんだから。こういうこと、するでしょ」
「そう、なんだけど、まだ慣れなくて」
これくらいのことでいちいち動揺する自分が恥ずかしくてたまらないのだけれど、勝手にこうなってしまうのだから仕方がない。
「じゃあ、イヤってわけじゃない……?」
その目に少しの不安が滲む。
「当たり前でしょ!」
そうか。緊張じゃなくて嫌がっているように見えてしまうのか。
そのことに思い至り、つい大きな声を出してしまった。
「……なら良かった。じゃあ、友人から恋人へ、その変化に少しずつ慣らして行こうか」
「え、あ、え?」
木村がそう囁きながら、私の手からスマホを取りソファ横のローテーブルに置く。
「前から思ってたんだけど、生田さんのすっぴん、幼くなって、なんか可愛い」
「三十過ぎた女に、すっぴんが可愛いなんて言ってるんじゃないよ」
木村の顔が近付き、手のひらが私の顔を撫でる。
来たっ! 甘いの、来た!
「仕方ない。可愛いんだから」
「可愛く、なんか――」
「俺、今、脳みそ溶けてるから。何言われても我慢して。思ってること、全部言いたくなる」
間近にある、木村の綺麗な鼻筋から唇へとそのラインに目を奪われているうちに、
自分の唇を塞がれていた。