ニセモノの白い椿【完結】
重ねられた唇は、最初は優しく啄ばむようなものだった。
下唇と上唇を、交互に唇で挟まれる。
なんなの、このキス。
穏やかなのに気持ちよくて、いらぬ緊張が消えていく。
両頬を支えるように木村の手のひらで挟まれて、濡れた前髪がさらりと顔を掠める。
焦らず少しずつ、私の心を開かせるみたいに唇をも開かせて、気付けば自ら唇を開けていた。
「……なんなの、その表情。ヤバいんですけど」
「じゃ、見ないでよ――っ」
木村の吐息交じりの声で目を開けば、いつの間に目を開いていたのか、ばちりと視線が合った。
「やだ」
この人、本当に意地悪。
「恥ずかしいってば!」
「それが可愛いの。そんな顔、俺にしかしないで。もうこの先、一生俺だけにして」
「何、言ってんの――」
「ダメだよ。そんなあなた知っちゃったら、もう、あなたを他の男に関わらせたくない。見せたくない」
そんなこと、そんな風に眉を歪めて言わないで。
「……やっ、あっ」
さっきまでひたすらに穏やかで優しかった動きが、急に変わる。
私の肩をがっしりとソファに押さえつけ、私の首筋に顔を埋める。性急な唇が首筋から鎖骨へと滑って行く。
「あなたの、吐息、声、全部、俺をおかしくする」
「ま、待って――っ」
「好きだよ。好き過ぎて、わけわかんない」
訳わかんないのは、私――!
突然上半身を抱き上げられ、素早くパジャマを脱がされる。その間も、木村の手のひらが止まることはない。
絶え間なく続く愛撫は、私の息を切れ切れにさせて。
私が出来ることと言えば、木村の肩にしがみついてただ快感を受け止めることだけだった。