ニセモノの白い椿【完結】
空席があって、なおかつ丁度良い開始時間のものを選ぶ。
それは、「嫉妬」をテーマにした少しダークな恋愛ものだった。
映画を観終わって、映画館と同じビルの中にあるレストランに入った。
「ホントに、嫉妬って感情は人を狂わせるよな。狂気じみてて、なかなかにホラーだった」
レストランの窓側の席に案内され、私の向かいに木村が座る。
「でもさ、嫉妬に苦しむのって、たいがい女の方だよね」
メニューを見ながら、呟く。
恋愛中って、女の方がやきもきしているという話をよく聞く気がする。
「まあ、どちらかと言えば、女性の方が嫉妬深いかもね。でも、男もないとは言えない。俺、一人知ってる。相当に嫉妬深くて狂気じみた奴」
そう言って木村が笑った。
「私も知ってる。榊さんでしょう?」
「おっ! もう、分かって来た?」
ウエイターが持って来た水を口にしながら木村が身を乗り出した。
「なんとなく見ていれば分かるし、それに、この前会った時に、榊さんが言っていたから。木村さんに怒られたことがあるって言っていたよ?」
「俺が、あいつに? なんだっけ……」
思いを巡らしている木村に、説明する。
「『度が過ぎる不安や嫉妬は、相手に失礼だ』って、木村さん、言ったんでしょう?」
「……ああ。そう言えば、言ったな。だって、俺と雪野ちゃんが喋っているのにまで激怒したんだ。アホだろ。あの子が創介を裏切るはずないのに。そもそも、相手、俺だよ? どれだけ見境ないんだか」
その光景を想像して、私も苦笑する。
榊さん、そんなにまでも心配になるほど雪野さんのこと大好きで仕方がないのだろう。
それは、見ているだけで十分伝わってくるのだけれど。
「……でも、創介の気持ちが理解できるようになっている自分が少し怖い」
「……え?」
木村が、肘をついて、私を真っ直ぐに見つめて来る。
「もちろん、あなたのことは信じてる。あいつみたいに感情的に怒ったりするつもりはない。でも、信じる信じないとは関係なく不安になってしまう気持ち、分からなくもない。創介も、そういう感じなのかも」
「木村さん……」
「創介に共感する日が来るとはな。笑っちゃうよ」
そう言って笑う木村は私から視線を窓の向こうへと移した。