ニセモノの白い椿【完結】
私は一体何をしてるんだ――。
閉じたドアに沿って、そのまましゃがみ込んだ。
これまで考えなくて良かったことを考え始めて、それこそ頭の中が一杯になって。
感情よりも理屈ばかりが私をがんじがらめにする。
今だって、さっきのキスの余韻がまだこの胸をこんなにも跳ねさせている。
私も見つめてくれる眼差しも、触れてくれる指の感触も、全部、私の胸を一杯にさせているのに。
一緒にいればいるほど、この二日でだって、思いは膨らんだ。
月曜よりも昨日、昨日よりも今日、木村を想う気持ちは大きくなってる。
本当は、もっと一緒にいたいとも思う。
でも――。
この心の中に、それと同じだけ自分を抑えようとする感情が棲みついている。
のろりと立ち上がり、部屋へと入る。
木村の部屋とは比べ物にならないほどの狭い部屋は、明かり一つ点けたただけで家中が明るくなる。
和室に足を踏み入れると、すとんと崩れ落ちるように座った。
本来なら、木村を好きになった瞬間から、ゴールなんてないはずの恋だった。
好きになった瞬間からその気持ちは自分だけのもので。
叶えばいいなんて思うことさえない、未来のない一方通行の恋だった。
だから、その想いが実ることなんて想定していなかった。
膝を立てそこに顔を埋める。
それが一週間前にジェットコースターのように急転直下して、その私の中の思考が全部ひっくり返った。
自分だけの想いだったものが、二人のものになった。
一方通行で終わるはずのものが通いあうものになった。
――生田さん、ずっと傍にいて。
ずっとって?
木村の告白を反芻する。
これまで考えなくてよかったことが次々に湧きあがる。
”ずっと”の先は、結婚――?
私と木村が――?
そんなこと、微塵も想像したことはなかった。
木村との未来を考えようとすれば、自分への防衛本能のようにすぐさま思考を停止しようとする。