ニセモノの白い椿【完結】


頭を悩ませる存在がいるとは言え、日々の業務は膨大で。
大型融資を決めたことで、その付随業務が俺の肩にはのしかかっている。

俺の取って来た融資案件の稟議書を、その審査を担当する融資課に上げたが、やはり、融資課の連中はああだこうだと難癖をつけて来た。

その理論武装をするために、またこちらも準備しなければならない。
それも致し方ない、融資額が大きいのだからリスク審査も厳しくなる。

月曜、火曜と、帰宅したのは0時過ぎ。
そして、本来なら早く帰ることができるはずの水曜日も、結局残業を余儀なくされた。

それでも腐らずにやれるのは、やっぱり、生田さんがいるからだ。

週末の金曜日、少しでも早く生田さんと会うためには、ウイークデーの間にどれだけ処理できるか。だから俺は、定時退勤日も返上で仕事をしまくっている。

「木村さん。じゃあ、すみませんけど、お先です」

「お疲れ」

隣の席の後輩のネクタイがなんとなくあざとい柄で、この日が何の日かを思い出した。

「CAと楽しんで」

「あっ。木村さんも本当は行きたいんじゃ……?」

「んなわけねーだろ」

手にしていた資料で追い払う。
考えてみれば、合コンなんて、学生時代以来したことがない気がする。
俺も社会人になって、相当に大人しくなったものだ。
まあ、ただ、意味のない行為を繰り返すことが面倒になっただけなのだけれど。

誰かと出会う。その行為自体が、すべて無意味なことだと思ったのだ。

「――おい、栗木、何してる。早く行かないと遅れるぞ」

そこに嫌な奴の声が耳に届いた。

「あっ、立科さん、すみません。今すぐ行きます」

それに呼応するように後輩の栗木が直立不動になった。

なんだよ。立科も行くのか。ったく、お盛んな奴だな……。

でも、生田さんを完全に諦めてくれたということだ。
それなら、CAだろうが女子アナだろうが、どこにでも行ってくれ。

”超肉食獣”立科に、全部持って行かれないように――。

そう心の中で栗木の健闘を祈りつつ、仕事に手を戻した。

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