ニセモノの白い椿【完結】
『――分かった。俺に任せて』
『えっ、な、何?』
とにかく、こんな場所から解放してやりたくて。
彼女の腕を引き、何でもないように席に戻り。俺の隣に座らせた。
そして、彼女の手を誘導して飲み物を俺の制服のズボンに零させた。
『ちょっとー、困るんですけどー』
わざとらしく大きな声をあげる。
『え、え?』
『濡れちゃって、困るなー。どうしてくれるの?』
慌てふためいて視線を揺らす彼女に目配せをして、勝手に話を進めた。
『責任とってよ。どこかで乾かしてもらわないと困る』
怯える彼女の手を取る。
『俺、この子に弁償させるから。ちょっと、出て来るわ』
『おお』
誰も俺たちに関心はない。それに、一番の問題の彼女の友人たちも、憐れむように彼女を見ていたから、多分、問題ない。
俺は何がなんだか分からないといった顔をしている彼女を部屋から連れ出した。
『あ、あのっ?』
カラオケルームを出てから、彼女に顔を向けた。
『もう、帰っても大丈夫だよ。君は、ドジをして俺に責められて弁償させられる羽目になっている悲惨な子としてあの子たちにも映ったはずだから』
『え……?』
おそらく。あの派手な子たちは、この子にいたたまれない思いをさせたくてこんな場に連れて来た。だから、俺がただこの子を連れ出したりしてはきっと逆効果。
『抜け駆けして生意気』とか言って、後からまた絡まれる。
『べ、弁償は?』
おそるおそる見上げて来る彼女に微笑んで見せた。
『嘘に決まってるでしょ。芝居だよ』
『でも、ズボン、本当に濡れてるよ』
『いいのいいの。とにかく、もう帰ろう』
そう言って俺はさっさと歩き出した。
『あのっ』
背後から彼女の緊張した声がした。その声に振り返ると、緊張した表情がそこにあった。