ニセモノの白い椿【完結】
仲間には内緒で、会うようになって。緊張していた彼女が自然に笑うようになった。
彼女のことを知るようになった。
家は小さな町工場。お金はあまりないけど、真面目で職人気質の父親をこっそり尊敬していると言っていた。
”絶対本人には言えないけど”って。
俺の周りにはいないタイプの彼女の雰囲気に、癒されていた。
創介をはじめとして俺の周りの人間は皆、特別な世界を生きていて。
日頃は気付かないふりをしていたけれど、どこかで疲れていたのかもしれない。
何でもない彼女といるとホッとした。
あの世界で少し背伸びをしている分、ありのままでいられたのかもしれない。
本当は、俺と彼女だって、同じ立場の人間ではないということを忘れて――。
ある日突然、彼女からの連絡が途絶えた。
メールも電話も何も繋がらなくなった。
学校も違う彼女と、携帯電話なんていうちっぽけなツールでしか繋がっていなかったのだと思い知る。学校にも行ってみた。でも、彼女はその学校を既に転校していた。
そして、後になってすべてを知った。
彼女と出会ったあの日。彼女と一緒に来ていた派手な子の中に、こっち側の子がいた。
つまり、上流階級の家の娘だ。俺たちとのパイプ役になっていた子で。
その子が俺のことを実は狙っていた。
そして、その女が俺と彼女が密かに会っているのに気付いてしまった。
そのことに、彼女に逆恨みをして。自分の父親にあることないこを言っていいくるめて、彼女の家の工場への融資を突然打ち切らせた。
その女の父親は、俺の父親と繋がっていたことを知る。
その後どうなったか。言うまでもない。
俺の前から、彼女は消えた。
いつか彼女に教えてもらった町工場は空っぽで、別のものに成り代わろうとしていた。
浅はかで愚かで軽率で、そして、無力な自分を罵った。
そして、罵ることしかできない自分に心底失望した。