ニセモノの白い椿【完結】
俺にとって、生田さんがどれだけ大きい存在なのか。
過去の記憶を久しぶりにたどって、改めて彼女に対する気持ちの大きさを実感する。
ずっと俺をがんじがらめにしてきた過去の呪縛を突き破ってまで、欲しいと思ったひとなのだと。
「おまえ、確か、『自分は博愛主義者で女心はたいてい分かる』そう言ってなかったか? そんなおまえが、そんな弱音を吐くとはな」
「笑うな」
俺だって、こんなにも自分自身に手こずるとは思ってもいなかった。もっとスマートに振る舞えると思っていた。
「悪いな。おまえはいつも飄々として何でも上手いことやってるイメージだったから」
いつまでも笑う創介に苛立ちながら、パスタを口に運ぶ。
「まあ、でも。それだけ本気だということだろう。想いが強ければ強いほど、相手が何を考えているのか知りたくなる。知りたくなるから分からなくなる」
「なんだよ。偉そうなことを言うようになったな」
フォークを運ぶ手を止めて、創介の顔を見た。
「そりゃあな。俺が何年雪野と向き合ってると思ってんだ」
確かに。悔しいことに、創介は本気で惚れた女ともう何年も向き合い続けて来ている。
俺よりずっと、真正面から生きて来たのだ。
「なんか、腹立つけど、納得」
グラスに残っている生ビールをすべて飲み干した。
「まあ、おまえなら大丈夫だろ? 俺よりよっぽど人の立場に立てるし、基本、優しいしな」
「優しくしてるだけじゃ、ダメみたいだ。俺のこと、どれくらい想ってくれているんだろうとか、くだらないことを考えている自分がいる――って、おまえにそんなこと言っても仕方ねーな」
言ってしまってから後悔する。今の発言は、いくらなんでも恥ずかしすぎるだろ。
でも、予想外に、創介が真面目な顔で答えた。