ニセモノの白い椿【完結】
「雪野と接していて学んだことだが、どうしても、自分のことよりこっちの立場を考えてしまうみたいだ。だから、そこだけは、相手が言葉にしなくても汲んでやらないと、いろんなことを見誤る」
自分のことより俺の立場――。
「なるほどな。確かに、雪野ちゃんはいつでもそうだな」
生田さんも――自分本位に生きているように見せて、実はものすごく相手を思いやる気持ちを秘めている人だ。俺より年上だと何かにつけて強調してくる生田さんならなおさら――。
「――おまえ、結婚、考えてるんだろう?」
グラスを置いて、創介があらたまって俺に問い掛けて来た。
「あたりまえだろ。その気持ちがなければ、彼女を手に入れたりしない」
「おまえなら、俺に言われるまでもないと思うが。とにかく、上手くやれよ。判断ミスは許されない。とにかく、確実な方法で」
その目に応える。
「分かってる」
生田さんを傷付けたりすることなく結婚まで持って行くにはどうするべきか。
考え始めている。
もう何もできない子どもじゃない。彼女を、何としても守りたい。
そのためにも、生田さんにもっと俺に心を許してもらえるようにしなければ――。
「雪野ちゃんが今幸せだってこと。それが何より俺の勇気になるよ。そう、雪野ちゃんに伝えておいてくれ」
「ああ、分かった」
そう言ってグラスを合わせた。
それから1時間ほど飲んで、バーを出た。
「ああ、そうだ。生田さんが雪野ちゃんに会いたいと言っていた。ニューヨークの土産を買って来たとかで。それも、雪野ちゃんに伝えておいてもらえるか?」
「分かった。雪野も嬉しいだろう。新しく友人が出来て」
そう言って笑う笑顔の優しいこと、優しいこと……。
ホント、氷の野獣はどこいった。
「でも、あんまり仲良くされてもな。いろいろ暴露されるのも、なんとなくイヤだ」
俺が苦笑すると、創介も「確かに」と頷いた。
バーの前で創介と別れたと同時に、スマホが振動した。
確認してみると、ディスプレイには生田さんの名前が表示されていた。