ニセモノの白い椿【完結】
階段を上がり、部屋の前に立つ。そして、インターホンを押した。
「はい」
「俺、木村です」
少し、声が硬くなった。
「今、あけるね」
その声からすぐに、ドアが開く。
「いらっしゃい」
目の前に姿を現した生田さんは――俺の想像を超える、たまらない恰好をしていた。
「入って」
それは、いつかの小包に入っていたピンクの薔薇柄のエプロン。
一緒に暮らしていた時は、一度もそれを使っているのを見たことはなかった。
エプロンだけを目にしたときは強烈に感じたその柄も、生田さんが着たら途端になじんで違和感がないものになっている。
非常に、たまらなく、最高に似合っている。似合い過ぎている。むしろ、そんな柄なのにエロ――いや、色気まで漂わせて。
しょっぱなからそんな刺激を俺に与えて、一体どうするつもりだ。
「何してるの? 早く入りなよ」
「あ、ああ。じゃあ、お邪魔します」
煩悩をひた隠し、爽やかな笑みを向ける。
もし、俺の両手が塞がっていなければ、間違いなく生田さんはこの場で押し倒されてる。
「荷物、たくさんだね。ここまで来るの疲れたでしょう?」
俺の前を歩いていた生田さんが、綺麗な目を細めて、俺の方に振り返った。
その目を見たらーー。
会いたくて会いたくて、ただこの日を待っていた俺の煩悩をひた隠しになんてできるはずもなく。
俺の手を塞いでいた荷物をすべて床に置いたと同時に、生田さんの腕を引き寄せていた。
その時絡まった彼女の視線は、酷く切なげで。
何も言わずにただ俺を見上げ、腕を振り払うこともしない。
生田さん、ダメだよ。それは、俺を暴走させるだけだ。
身体ごと腕の中に閉じ込めるように抱きしめて、彼女の唇を塞ぐ。