ニセモノの白い椿【完結】
「ロールキャベツ、美味いね。いい味が沁みてる」
「良かった。今日のメインディッシュだからね」
さきほど、俺の理性を試して来た料理だ。そう思えば、他の料理以上に味わって食べなければと、そんな意味の分からない感情が生まれた。
そして、食べてみて思う。あの暴走を止めるだけの価値がある。
最高に美味い。レストランで出しても遜色ない。
「それにしても、生田さんはどこで料理を覚えたの? 子供の頃からやっていた? それとも料理教室とか?」
何を作っても、生田さんの料理は全部美味しかった。それに、レパートリーもかなりの数だ。
素朴な疑問として問い掛けた。
「あぁ……。それは、料理教室」
生田さんの表情が微妙に変わる。視線を逸らし、言いづらそうに口にした。
「……そ、そうか。そなんだ」
その様子で気付く。それはきっと、前の旦那のために通ったものだったということ。
余計なことを聞いてしまった。
「短期間でこんなに習得するなんてすごいよ。もともとセンスがあったんだろうね」
気まずくなったりしたくなくて、何でもないように話題を続けた。
そして、生田さんの空になっていたグラスにすかさずシャンパンを注ぎ足す。
彼女が、「ありがとう」と言って、それを一息に飲み干した。
「自分でもそう思うよ。それに、料理は結構好きだしね」
良かった――。
生田さんも普通にそう答えてくれた。
こういうところが、友人という関係から変わったところなのかもしれない。
以前なら、生田さんは普通に元旦那の話をしていた。でも今は、俺に気を使って、あまり触れなくなっている。
確かに、あの男のことを思い出せば、複雑な感情になる。
以前は気にしないようにしていたし、気にする立場にないと自分に言い聞かせられた。
でも、今は――。言い聞かせきれなくなっているのもまた事実。
それでもやっぱり、生田さんの過去も現在もひっくるめて好きなのだ。
あまり気を使わせすぎるのも本望じゃない。