ニセモノの白い椿【完結】
温かくて美味しい料理と、口の中で弾ける泡と、そのシャンパンのおかげで増えて行った彼女の笑みで、俺はこれ以上ないという幸せな時間を過ごした。
「ケーキ、美味しかった。ちょっと、食べすぎなくらい食べたよ。太っちゃうかも」
生田さんが、ふにゃりとした笑顔でそう言う。
ほろ酔い気分でケーキを二人で食べた。
本当に無意識なのだが、食事を終えてデザートを食べる時には、自然と二人となり合って座っていた。
これは、俺の本能がなせるわざか。
「美味しく食べるのが一番。生田さんが太ったって、俺は全然かまわないから」
「そんなこと言って、『太った女は嫌だ』とか言い出すんでしょ!」
少々呂律が怪しくなっている生田さんは、俺が近くに座っていることに気付いていないらしい。彼女もごく自然に、俺の隣で座っていてくれる。
「言わない。あなた自身が好きなんだから。見かけで好きになったわけじゃないよ?」
ちょうどケーキも食べ終わって。お互い酒だって十分飲んだ後で。
しらふの時よりずっとずっと心は解放されている。
「じゃあ、どうして私なんか好きになるかな。第一印象、最低だったでしょ」
目元が赤くなって少し潤んでいる。酒に酔った彼女は、またも色気を大量放出している。
「確かに、あの時のあなたは酷かった。でも――」
彼女の頬に触れながら、笑う。体温を感じられるほどの距離に彼女がいる。
「どうしても、放っておけなかった。その口から出る言葉は全部酷いものなのに、あなたの表情はとても悲しそうで。そのアンバランスさに、目が離せなかった。俺は多分、出会ったその日にあなたに惹かれてたんだーー」
俺がそう言い終わるか終わらないかのところで、突然生田さんが俺の胸に飛び込んで来た。