ニセモノの白い椿【完結】

さっき抱きしめた時より、生田さんの身体が熱く感じる。
無言のままに俺に身体を投げ出して来たその背中に、そっと腕を回す。

首筋に感じる彼女の吐息、背中で感じる呼吸、そのすべてが愛おしくて、ぎゅっと抱きしめた。
こんな風に生田さんの方から身を寄せてくれたのは初めてで。大切に抱きしめたいと、そう思った。

「――私なんか、誰も本気で愛してくれないと思ってた」

しばらく抱きしめていると、くぐもった声がした。

「見かけだけで中身は空っぽで、醜くて。そんな自分を一生懸命隠して来た。隠していた一方で、気付いてほしかったのかもしれない。本当は、ロクでもない人間だって。知られたくないのに知られたいって、矛盾だらけだよね――」

「いいよ」

抱き締めていた手で、今度はきつく彼女の肩を掴んだ。
俺の胸に寄せていた身体を起こした。

「あなたがどんな姿でいたって、俺にとっては同じだから。装っていても、曝け出しても、関係ないんだ」

潤んだ目が、少しの怯えを滲ませながら俺を真っ直ぐに見ている。

「どれも全部、生田さんだろう? 俺は、どんなあなたも可愛い。一生懸命完璧に見せているあなたも、裏で毒吐きまくっているあなたも、それでいて本当は優しいあなたも。生田さんは生田さん。俺の大切な人だ」

潤んでいた瞳に、薄い膜がぷっくりと膨れ上がる。
静かにこらえながら泣くのを我慢する彼女を見ていたら、たまらなくなって。
頭を抱え込むように引き寄せ口付けた。

言葉でも態度でも心でも。何もかもで伝えたい。

俺が見て来たどんな姿も全部、愛おしい。

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