ニセモノの白い椿【完結】


無我夢中で抱きしめた。
彼女の手も俺を求めてくれていると分かる。
唇を重ねながら、お互いの服を脱がし合った。

早く、肌を触れ合わせたくて必死に服をまさぐる。
肌と肌を隔てるものが全部もどかしくて、そして、少しでも繋がっていたくて懸命に唇を深く絡め合った。

俺を欲しいと言った彼女の、俺を求める顔を見たくて、時おりこっそり目を開けた。

俺に必死にすがる首に絡まる腕だけじゃなくて、その表情すべてが想いを表してくれているように思えた。

普段は絶対に見ることができない顔。抱き合う時にだけ見せてくれるその顔に、ただでさえ興奮している心が昂ぶる。
びたりと一つになりたくて、彼女の白くしなやかな身体をきつく抱きしめた。

「ん……あぁっ」

その時、漏れた艶声に、身体の真ん中が激しく疼く。
でも、すぐにその声は消え去った。
彼女が、苦悶した表情で口元を手で押さえていた。

「ど、した?」

「ん――っ!」

もっと感じてほしく、腰を執拗に跳ねさせると、一際苦しそうに彼女が眉をしかめた。

「この部屋、壁、う、すい、から……っ、ん」

それで、懸命に声を抑えている――。

「じゃあ、その声、俺にちょうだい」

彼女から発せられるものは全部俺が受け止めたい。彼女の口元に当てられていた細く長い指を絡め取り、すぐさま俺の唇で塞ぐ。

このまますべて溶け合えたら。

本気でそんなことを思ってしまう。
彼女の温かな体温を感じれば感じるほどに溢れ出す。

「椿、つばき……っ」

溢れる感情が、俺に何度も彼女の名前を呼ばせた。
その名前を呼ぶ度に、彼女の身体が反り返る。

次から次へと溢れ出る想いに、気付けばとんでもない力で抱きしめていた。

二人して果てた後、肩を上下させている生田さんを見てその背中をさする。

「苦しかった?」

「ううん。なんか、木村さんの気持ち、感じられて、嬉しかった……」

俺の下で、彼女が頬を上気させて微笑んでそう言った。
その表情を見たら、何故か鼻の奥がじんと沁みた。
その微笑みを全部見たくて、彼女の頬にはりついた髪をかき上げた。
露わになった顔は、どこか幼く見えて、また胸が刺激される。

その刺激は、俺に訳の分からない感情を連れて来る。
彼女の笑みが、不意に儚く見えたのだ。

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