ニセモノの白い椿【完結】
その夜、一組の布団で身体を寄せ合って眠った。
「うちだと、寝るのに狭いよね。ごめん、窮屈で」
「いや、むしろ否が応でも身体をくっつけなくちゃいけないし、俺的には最高だけど?」
こういう風に一つの布団で誰かと眠るなんて、初めての経験かもしれない。
これ、なかなかいい。いや、かなりいい。
「なんか、木村さんの顔、ヤラシー」
椿が、呆れ顔で見上げて来る。
「男なんてね、みんな中身は下心で出来ているんです。頭の中はやらしいことで一杯だよ」
「冗談はさておき――」
そんな馬鹿な発言は軽く流され、彼女がぽつりと言葉を漏らした。
「冬にはこの布団一組じゃ、寒いよね……」
思わず零れ出たような声だった。そして、椿の視線が不意に翳る。
その頃までには、一緒に暮らしていたい――。
すぐさまそんな思いが胸に過った。
その頃までには、俺と同じ将来を見ていてほしい。
「寒くたって、椿と一緒なら構わない」
その想いを込めて、腕の中に抱き締める。
身を寄せ合ってお互いの吐息を感じながら眠りについた。
次の日は、彼女お手製の弁当を持って大きい公園へと出向いた。
大人になってのピクニックも、初めてだ。子供の頃家族でした以来かもしれない。
残暑の陽射しは、木陰に入れば心地よいものに変わる。
レジャーシートを敷いて、風に吹かれて。
美味しい弁当を食べる。
こんなに幸せでいいのだろうか。
椿もずっと、笑っている。一つに縛った長い髪から出るおくれ毛が風になびく。
装ったものでも強がったものでもない素の笑顔は、彼女を一際綺麗に見せる。
椿の笑顔は、何より俺を安堵させた。
「あまりに気持ち良すぎて、眠くなるな」
「木村さん、いつも残業で遅いしね。寝ていいよ」
そう言って、膝の上をぽんぽんとした。
予想外の言葉に、俺は身体を椿の方に向ける。
「それって、膝枕してくれるってこと?」
「そうですけど?」
にっこりと微笑む椿の笑顔を確認したら、彼女の気が変わらないうちに速攻で頭をそこに載せた。
「――ヤバい。最高です」
「それは、良かったね」
見上げれば、愛おしい笑顔が俺を見下ろしている。
最高のアングルだ。
本当はいつまでも見ていたいけれど、目を開けたままなのも怪しい気がして、瞼を閉じた。