ニセモノの白い椿【完結】

「”離婚”という言葉ですべてをひとくくりにする人間の方が、思考が停止していて愚かだと思いますけど」

「なんだと……?」

手にしていた新聞紙をテーブルに置くと、眼鏡の向こうの鋭い眼差しが俺に真っ直ぐに向けられる。

俺は、ふっと息を吐くと改めて二人を見た。

「今日は、お父さんとお母さんに話しておきたいことがあって来ました。母さんも、座ってよ」

そう促すと、父親と俺との間でおろおろとしながら父親の隣に母親が腰掛けた。

「この前も話したけど、俺はこの先、一切見合いをするつもりはない。だから、そういう話はすべて断ってほしい」

俺の言葉に、間髪入れずに父親が口を開く。

「これまでもいくつか見合い話はあったが断って来た。でも、この前、おまえが勝手に断ったお相手は、おまえにとって一番相応しい相手だと私が判断した方だ。だから、見合いをさせた。それを分かっているのか?」

そうだ。俺にとって初めての見合いだった。つまり、親にとって合格点の、お墨付きの相手だったということなのだろう。

「銀行員というものは、何より信用が大事だということは分かっているだろう。おまえも来年は30だ。もう身を固めて居ても早くはない年齢なんだ。もちろん、ただ結婚すればいいというものでもない。信用を得るためには、その相手も重要なのだ」

「その話ですが――。俺には今、結婚したいと思っている人がいます。俺にとって何より大切な人だ。だから、それだけはお父さんも母さんも、分かっておいてください」

はっきりとそう告げると、母親は小さく声を漏らし、そして父親はよりその視線を険しくした。

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