ニセモノの白い椿【完結】


その声とキスの味は、今日はなんとなく苦い。

「――何考えてるの?」

唇を離すと、木村が顔を覗き込んで来た。
その目は、苦手だ。

「外なのになって、思ってた」

「なに、それ。冷静だな」

木村が苦笑するから反論する。

「だって、そうでしょう。外でこんなこと。高校生じゃないんだから。恥ずかしいったらない」

そう言い捨て、私はさっさと歩き出した。

「仕方ない。したくなったんだから」

そのあまりにも単純な言い分に、思わず呆れて振り返った。

「木村さん、そうやって、たまに子供みたいになるよね」

「男は、好きな女性の前では子どもみたいになるんじゃないかな?」

嫌味なほどに爽やかな笑みでそんなことを言う。
私がわざとらしく大きな溜息を吐くと、「そんな俺、好きでしょ?」と悪びれもなく聞いて来た。

「好きですけどっ!」

本当に、悔しくて腹が立つ。
冗談なのかなんなのか分からないふざけたことを言う木村も、とびきり優しいところも、スイッチが入った時の男の色気満載なところも、一本筋を通す男らしいところも、悔しいくらいに惚れてます。

「そんな顔で言うことじゃないよね」

隣に駆け寄って私の腕を引き寄せた。
結局、この人といると笑ってしまうんだから。

そうだ。せっかく木村が作ってくれた時間だ。こうやって笑って過ごそう。


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