ニセモノの白い椿【完結】
人との縁って、実は、意外に些細なもので結ばれているのかもしれない。
ちょっとしたきっかけや、タイミング。
そういうものが、何故か上手く行く。その先にあるのが、永遠の縁。
逆に言えば、それが上手く行かなければ、どれだけ想い合っていたとしても縁にはたどり着けない。
少し憂鬱な月曜日。
まだ、旅行の余韻と唐島嬢が会いに来たこと――その二つが頭を占めている中、なんとか業務につく。
婚約者だもんね。そう時間はないのかもしれない。
じゃあ、私はどうするの。
一番大事なその結論が出ていない。
唐島さんのことをつい考えてしまう。
とりあえず唐島さんが会いに来たということは、今日の夜にでも電話して木村に話そうか――。
そう頭の中で考えていた。
月曜日の窓口は恐ろしく混雑する。
「生田さん、ちょっといいかな」
「なんでしょうか?」
隣の白石さんとともに忙しなく働いていたところに、直属の上司から声を掛けられた。
「ちょっと、来てくれる?」
「え?」
白石さんも驚いたように顔を上げた。
このクソ忙しい時になんで――?
「とにかくいいから、急いで」
急かされるようにフロアから連れ出された。
廊下に出されると、上司が複雑な表情を浮かべて私に視線を寄こした。
「一体、何したの」
「は?」
こっちが聞きたい。一体何事かと。
「派遣の生田さんが、どうして頭取に呼ばれるの」
「頭取……ですか?」
それは、つまり――木村の父親。
一瞬にして、緊張が走る。
「迎えの車、そこに来てるから今すぐ本店に行ってください。とにかく失礼のないようにね」
そう告げられると、あっという間に黒塗りの車の後部座席に押し込まれた。
これじゃあ、完全な拉致だ。
「あの、一体、どういうご用件で」
仕方なく運転手に聞いてみる。
「すみませんが、私はお連れするだけで、ご用件までは存じ上げておりません」
そうでしょうね。
ここでじたばたしても逃走できるわけでもない。
諦めてシートに身体を預け目を閉じる。
当然、木村は知らないよね――。
こんなことなら、唐島嬢が来たことを言っておけばよかったか。
でも――。きっと、それでは根本解決にはならない。
木村の父親は、木村にではなく私に話があるのだろう。
唐島さんでは埒があかないと判断して、この手段に出たのか。
ふっと息を吐く。
私も、いよいよ覚悟を決めなくちゃいけないみたいだ。