ニセモノの白い椿【完結】
合鍵を使って鍵を開ける。
明かりのついていない部屋に足を踏み入れた。
何をする気にもなれずに、照明を灯してソファに腰掛ける。
ただじっと、木村がそのドアから入って来るのを待つだけだ。
おかしくなりそうなほどに胸が痛い。
もう、メールを読んだ頃だろうか。
それとも、まだ仕事をしているだろうか。
心の奥底で、あのメールを取り消したいと言い出しそうな自分が現れそうで懸命に押し止める。
大丈夫。もう迷いはない。
足もとに置いた鞄が少し振動する。
びくっとして恐る恐る見てみると、スマホが振動していた。
もしかして、木村――。
そう思うと緊張で見るのが怖かった。手に嫌な汗をかきながら手にすると、実家の母親からだった。
(相変わらず全然電話くれないけど、元気にしてるの?)
「う、うん。ちゃんとやってる。心配ない」
(ほんっと、言葉が少ないこと。もう少し、何かないの?)
呑気な母親の声に、泣きたいのか笑いたいのか分からなくなる。
「……だったら。一つ、聞いていい?」
(なぁに?)
「もしも。もしもなんだけど。眞が、年上のバツイチを結婚相手だって連れて来ていたらどうした?」
(えぇ? 何よ、急に)
「もしもの話」
そう言うと、母親が考えだした。