ニセモノの白い椿【完結】

スマホを膝の上に載せる。
それと同時に、再び振動した。

今度こそ、それは木村だった。

思わず目を閉じる。

もう、あのメールを読んだということだ。

慌てて電話をしてきたのか。

ここで電話には出られない。
その代わりにメールを送信した。

(今、木村さんの部屋で待ってます。会って話したい)

それに、少し経って返信が来た。

(絶対にそこにいろ)

いつもと違う短くて乱暴な言葉。
それだけで、木村の怒りが感じられる。

それから20分もしないうちに、木村が乗り込んで来るように帰って来た。
どれだけ急いで帰って来たのか。前髪が、酷く乱れていた。

血相を変えて飛び込ん出来た木村に、声を発する間もなく押さえつけられていた。

「あのメール、一体なんだ。なんの冗談? あんな冗談、全然笑えないんだけど」

「離してっ」

肩に指が食い込んでしまいそうなほどの力で、ソファに張りつけられる。

「私は逃げも隠れもしないよ。だから、離して!」

鬼のような形相で私を見下ろす木村に叫んだ。
激しく瞳を揺らしながら、木村が手を離す。

「ちゃんと聞いて。ちゃんと話そう」

全身で怒りを表していた木村が、崩れ落ちるようにソファに座る。
真っ直ぐに木村を見つめた。

「私のところに、唐島さんという方がたずねて来た」

「……え?」

木村の目が見開かれる。その顔は、やっぱり何も知らないんだ……。

「それで、その後にあなたのお父様にも呼ばれた」

「……な、に? それは、いつ? どうして……。俺は何も聞いてない!」

隣に座る木村が、激しく動揺して私の腕を掴んだ。

「それでも、私のところに来たの。木村さんには何も言わずにしたことなんでしょ。どうして唐島さんという方が私に会いに来て、あなたのお父さんに呼ばれたか。分かるよね?」

「……だから何? それで、こんなにも突然『終わりにしたい』なんて言い出したのか? 一体、何を言われた。俺と別れろとでも言われたの?」

片方だった手が、その両手で私の腕を掴む。その手の力の強さが、胸にまで響く。

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