ニセモノの白い椿【完結】
「簡単に言えばそういうことなになるのかな。やっぱり、私がバツイチなのが気に入らないらしい。
本当なら、木村さんのためを思って何も言わずにあなたの前から消えるっていうのがいい女のすることなのかもしれないけど、残念ながら私はそんなに慎ましい女じゃないから。何もかも、全部話すためにここに来た」
「俺は、椿の存在を明かしていない。それなのに、なんであなたのところに……」
自分を責める木村に、私は静かに言った。
「そんなの、いくらでも調べられるでしょ。唐島さん、婚約者なんだよね? 婚約者だから私に会う権利があると言っていた」
「ふざけるな。そんなわけないだろ。そんな話、俺は受け入れてない。あなたがいるのに婚約なんかするはずがない。俺を、信じられない?」
木村の目が怒りと狼狽とで激しく揺れている。
「あなたのことは100パーセント信じている。でも、それが木村さんのご両親のご意向だよ」
「だから? だから何なんだ! 俺には関係ない」
「あなたの親でしょ? 関係ないことないよね」
すぐさま言葉を返す。絶対に、このやり取りに失敗は許されない。
「え……? 何、言ってんの? そんなことで別れるとか、本気で言ってるのか?」
「ご両親のことは、そんなことなんかじゃない。大事な人でしょう? 木村さんにとっても私にとっても」
「あなたと付き合い始める時に言ったよね? 椿に辛い思いをさせるかもしれない。でも、もう覚悟は決めているって。約束もした。何があっても俺を信じてくれって。絶対に離れないでって。
俺は、両親を何が何でも説得する。それに、離婚歴がなんだよ。それの何が悪い? あなたはあなただ。
勝手に椿のところになんて行かせてしまったのは俺の落ち度だ。それは謝るし、もう絶対にそんなことはさせない。だから、別れるなんて言うな――っ」
その目が必死に私に訴える。
射抜くような目に苦しくなり目を逸らすと、木村が力任せに私をかき抱いた。
苦しくて、何も言えない。
「……どうして、何も答えないの? 俺が、どれだけあなたのことを想っているか、知ってるだろ? まだまだ伝え足りてなかった? だったら、嫌ってほど思い知らせるよ。そんなこと二度と言い出さないように!」
そう吐き捨てるように言うと、木村が力づくで私の唇を塞ぐ。何度も唇をぶつけて来た。
「……やっ。やめて」
木村の胸を必死に押す。