ニセモノの白い椿【完結】

「――すべて、おまえのためだ。広い視野で先のことを考えれば、これが最善の選択だ。おまえも、いずれ年を重ねた時にそう思えるだろう」

「本当に愚かだな。正直、自分の親がこれほどまでに愚かだとは思わなかったよ。まあ、そこまで愚かなはずはないと信じていた自分が一番愚かだけどな」

「な、んだと……?」

手にしていた新聞紙がテーブルに置かれる。

「父さんが、彼女ではだめだという一番大きな理由はなんだ? 離婚歴か? そんなことで人を判断するのか」

「”そんなこと”なんかではない。重要な要因だ」

親とは切っても切れない関係だ。親という存在は、常に俺の前にあって、その背中を見て育って来た。絶対的な存在だった。
でも、親だからと言って、すべてが正しいわけじゃない。
俺には俺の、正義と正解がある。

「一体、何様なんだよ。この家は、どれほどのものなんだ? ただの家だろ。あなたが頭取で、専業主婦の母さんがいて、俺がいて姉貴がいる。それ以上でもそれ以下でもない。ただの人間の集まりだよ。ただの人間が、そんな風に簡単に人に評価を下せるのか」

イギリス王室より上のつもりでもいるのか? 

本当に、くだらない。一体それで、何を守っているつもりなんだ。

一番大事なものを守れない人間が、この先、何を守っていくと言う?

「彼女が一番自分を責めてるよ。そんな必要なんて何一つないのにな。そんな彼女が、俺の親であるあなたから”離婚した人ではだめだ”と言われたら、それを受け入れるしかないだろう。あの人は、俺のことを想って身を引いた。俺を大切に育てて来た両親と仲違いする姿は見たくないと、俺には誰に対しても後ろめたさを感じなくていい明るい道を歩いてほしいって言ってな!」

悔しくてたまらない。
そんな言葉を椿の口から吐かせなければならなかったこと。

俺が、結局、一番椿を傷付けたということ――。

「それが、どういうことか分かるか? それが彼女の想いだ。深い想いだよ。それを前にして、それより他に何が大事なことがある? ”離婚歴”が一体なんだ。それが何だ? それはただの事実でしかないだろ。それが彼女の価値を決めるものなんかじゃない。俺があの人を愛した。それがすべてだ!」

俺は、間違っていた。
根本から間違えていたんだ。

もっと、ちゃんと考えるべきだったんだ。

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